ユニセフの先進国の子どもの幸福度レポートによると
日本のこどもの精神的幸福度はワースト2位。(2020年)
身体的幸福度は1位になっているにも関わらず、こどもたちの心は幸福を感じていません。
近年、日本では子どもの自殺者数が増加傾向にあります。
原因や動機は不詳なことが多いですが、家庭や学校の問題が主であるということはわかっているようです。
「SNSやインターネットが普及し、他人と比べてしまうからでは?」
「情報化社会で、真偽不明の情報が簡単に手に入り翻弄されているのでは?」
「ネットいじめもよくあるから…」
情報化社会のせいで子どもの幸福度が下がっているのではないかという意見も多数みられます。
しかし、情報化社会なのは日本だけでなく、世界中のことでもあります。
そんな情報化社会のなかでも、子どもたちの精神的幸福度ランキングの上位の国があります。
1位オランダ 2位デンマーク 3位ノルウェー
いずれもヨーロッパです。
日本とヨーロッパの違いはなんでしょう?
教育です。
ヨーロッパのほとんどの国では、哲学が必修科目になっています。
ヨーロッパは哲学発祥の地と言われるほど有名な哲学者がたくさんいます。
ヨーロッパの教育は、
対話をしながら、ものごとについて深く考え
その中で相手の意見を受け入れたり、自分の頭で考えて出した答えをもとに行動していきます。
哲学を学ぶと、ものごとを広い視野でみることができます。
広い視野をもつことで、さまざまなことを受容したり、
また対話を続けることで自分の意見を伝える術を身につけます。
ヨーロッパに行って教育を受けさせることは難しいですが
今すぐに家庭でできる哲学があったらどうでしょうか。
子どもたちが上手に考える方法を身につけ、思考力を高めていくために
大人たちができることはなんでしょうか?
この記事ではテレビ番組『Q〜こどものための哲学 NHK for school』を参考に、
対話力を培うために、どう考えるのか、そのヒントを8つのワードとして紹介しています。
【Qワードとは】おすすめの対話方法 8つの問いでこどもと哲学しよう
なんで?
Qワードおぼえうた|NHK for School より引用
ほかの考えは?
反対は?
もし〜だったら?
そもそも?
立場を変えたら?
たとえば?
くらべると?
番組の中に入っている歌詞の一部です。
難しい言葉ではなく、誰もが聞いたことあるようなワードです。
この8つのワードをQワードといいます。
家庭でディスカッションをする上で難しいデータや資料は必要ありません。
この8つの問いかけを用いて普段から、こどもと対話をしていくのです。
大人でも考えがまとまらないときや、考えるのが難しいときもあります。
普段考えるときや、悩んでしまった時にこのワードは使いますか?
自分の子どもに問いかけていますか?
原点に帰って思考することで、考えをしっかりまとめ、
他人への理解と自分自身の考えの理解につながっていきます。
Qワードを使って、具体的にどんな考え方ができるか、次の項で見ていきましょう。
子どもだけじゃない 大人にもおすすめしたいQワード哲学
Qワードおぼえうたでは、疑問の内容からどのような考え方をするか歌詞にされています。
なんで? 理由をさぐってみる
Qワードおぼえうた|NHK for School より引用
ほかの考えは? いろんな考えを出してみる
反対は? あえて逆で考える
もし〜だったら? 仮説を立ててみる
そもそも? 前提から疑ってみる
立場を変えたら? だれかの気持ちになってみる
たとえば? 具体的にあげてみる
くらべると? 違いはどこかさぐってみる
もちろん、このように考えたら必ず正しいとは限りません。
失敗したり、疑問に思ったときに、またこのQワードに戻ってくることで、
考え方を修正していったり深くしていったりできます。
環境で決められてしまった価値観
私の長女が5歳くらいのとき、こう言いました。
『男の子なのにピンク着るの?』
もちろん私は男の子だからとか女の子だからこの色だとか教えたことはありません。
でも長女の反応は、周りの環境から見たら自然な反応なんですよね。
なんで?子どもはそのような疑問をもったのでしょう。
子ども用の衣料品店に行けばよくわかります。
『男の子用』『女の子用』としっかり分けられた中に、
男の子用には黒や青、かっこいい乗り物や恐竜のデザイン。
女の子用にはピンクや黄色、ハートやキラキラのデザイン。
このような環境では『男の子なのに』という定着してしまった考え方も理解できます。
長女のような問いには
「そもそもピンクは女の子の色って決まっているの?」
「(立場を変え)長女ちゃんはピンク好きだけど、もし男の子だったらどうする?」
と対話を広げていくと、こどもは考えるきっかけになるかもしれませんね。
固まってしまった考えは誰かを傷つけるかもしれない
『普通』というのは、多数派(マジョリティ)の価値観のことがよくあります。
その『普通』の価値観や当たり前が少数派(マイノリティ)を傷つけてしまいます。
そもそも、多数側の『普通』は『正しいこと』なのでしょうか?
少数側を傷つけてまで、通したい意味のある価値観なのでしょうか?
もし自分が少数側だったら?同じように批判できたでしょうか?
このような例もあります。
乳幼児を抱いた母親がスマホを触っている
その一場面を見ただけで、
「この母親はスマホばかり見ている!」と
一方的に悪い母親のレッテルを貼り付けてしまうことがあります。
確かに、世の中には色んな人がいますから、本当にスマホばかりでネグレクトの親もいるでしょう。
しかしこの一場面で否定するには、自分の正義を振りかざしているに過ぎません。
ほかの考えを出してみることでいろんな可能性がでてきます。
- 緊急の連絡が入った
- 仕事の取引をしていて、相手を待たせられない
- 授乳したり休憩できるところを探している
- 施設や病院を調べている
- 1人で抱えている悩みを解決しようと情報を探っている
もしその母親や、抱えている子が急な体調不良だったら?
周りができることは批判ではなく、手を差し伸べることではないでしょうか。
安易な不平不満批判は、孤立する人をさらに孤立させ、どんどん傷つけていきます。
立場を変えることで自分のすべき行動が見えてくることもあります。
哲学は、自分も相手も救うことのできる学問なんだと私は思います。
Qワードに沿って考えることで自分を守ることもできる
自分が誰かに傷つくことを言われた経験、誰しもあると思います。
確かに言われたときは、傷つき、悲しみを超えて怒りにさえ変わってしまうことがあります。
なんであの人はこんなこと言ったんだろう?
もし自分が相手の立場だったらどんな気持ちだったろう?
たとえばこういう行動をとっていたら結果は違っていた?
そんな時の上記のようにQワードで考えることで、自分自身の心を落ち着かせたり、相手を許せたりし、
無駄な争いを避けることもできますし、今後の教訓にもできます。
【Qワード】こどものための哲学は、大人こそ立ち止まって考えたい
子どもには柔軟性があり、最初は純粋無垢な存在です。
思考力を高めていくには子どもの頃からの積み重ねは大事です。
しかし子どもだけでなくQワードは大人こそ、常に考えていて欲しいワードだと私は思っています。
大人になると、考えが固執してしまって柔軟に動けなくなったり、
他人の考えを受け入れにくくなることもあります。
大人がQワードでディスカッションするのを見たこどもは、
対話の仕方を覚えていきます。そして相手の意見を受け入れたり、深く考えて思考力を高めていきます。
特別で難しい教育方法ではないのです。
育児では、つい大人は、子どもよりも優位に立って物事を考えがちですが、
必ずしも親が正しいとは限りません。
子どもは子どもの中の道理があります。
子どもの思考力を伸ばすためには、子どもの疑問や悩みに親がQワードを使って一緒に考えていくと良いでしょう。
こどもと哲学するためにおすすめしたい本
なんだか、真面目なお話になりましたが
哲学で思考力を高めていくことで、自分にも他人にも優しくなれると思います。
私自身も余裕がなくなったときこそ、Qワードで考えるようにしています。
情報がたくさん溢れる世の中で、これからの子ども達が
争いなく、本当の幸せを感じるために必要な対話力を鍛えていく必要があります。
こどもと哲学するために哲学とは?というところから勉強してみたい方におすすめしています。
身近な疑問、だけど深く考えることのなかったことを多角的に考えるきっかけになる本です。小学生くらいからおすすめできます。もちろん大人でも◎
年中さんくらいからであれば、どうぶつたちが出てきて感情移入しやすい本ですすめていくのもおすすめです。
自分だったらどう考えるか?対話しながら読んでもいいですね。
今回、記事で取り上げたQワード、
Q〜こどものための哲学 NHK for schoolでは、
下の図書を参考にされているそうです。
Qワードおぼえうた|NHK for School 公式HPに歌が載っていますので、覚えたい方は一度観てみてください。